最近、バイオエタノールをはじめとする、「エコ燃料」なるものをよく耳にするが、本当に環境保全に役に立っているのであろうか。個人的には、逆に環境に優しくないのではないかと思う点もある。
疑問点について述べる前に「エコ燃料」について簡単に説明をする。エコ燃料はトウモロコシを主とする植物から作られるエタノールを主とする燃料の総称であり、植物として成長する期間は光合成により二酸化炭素を酸素にペイバックできるので環境に優しいということである。
一応筋は通っているが、疑問点を3点あげたい。
====第1の疑問点 光合成の量は本当に増えるのか?
「エコ燃料」がエコたる所以は燃料の原料が植物であり、光合成が行われるということである。「エコ燃料」を導入が環境に優しくなるためには、光合成の量が増えること、つまり植物の作付け面積が増えることが条件になる。ところが現状を見ると、どうだろうか。「エコ燃料」原料を確保するために、大豆畑をトウモロコシ畑に変更した。とか、これまで食用にしていたトウモロコシを「エコ燃料」の原料に回した。ということをよく聞く。この2例の場合、作付け面積は増えていないので、二酸化炭素の消費に影響を及ぼしていない。聞いているだけの情報なので、全体としてみると実際は作付け面積が増えているのかもしれないが、大々的に宣伝しているほどにはエコの役に立っていないのではないようである。
====第2の疑問点 食料を燃料にしてしまって影響はないですか?
トウモロコシは飼料として使用されている面もあるが、食料として重要な意味合いを持っている。さて日本が大々的に「エコ燃料」を推進した場合どうなるか。トウモロコシをそれほどに耕作していない日本としては原料は当然輸入することになる。「エコ燃料」の使用量が増えれば増えるほど、トウモロコシの輸入が増える訳で、2つのパターンが考えられる。
1つめのパターンが、アメリカからの輸入が増えるパターンである。アメリカが「エコ燃料」にノリノリなのはこの辺に理由がある。アメリカのトウモロコシは遺伝子組み換えの疑惑があるため、世界的にブランド力が落ちているのが現状である。そこで余ったトウモロコシを燃料に変えて日本に売りさばこうという寸法である。ついでに世界に対して「エコ国家」を宣伝をしたい、という下心が見え隠れしたりする。(そこに乗ってしまっている日本政府もなんだかなーと思ったりしますが)。
2つめのパターンが、途上国からの輸入が増えるパターンである。途上国ではトウモロコシは主に食料として育てられており、各国の食糧需給の重要な役割を担っている。ここで、お金持ちな日本が「エコ燃料」の原料としてトウモロコシをほしがったらどうなるであろうか。途上国の農家とすると、国内に食料として販売するよりも日本に燃料の原料として売る方が高く売れることが容易に想像つく。結果として、多くのトウモロコシが日本に流れるため、国内の食糧需給に大きな影響を与える可能性が大きい。
====第3の疑問点 石油の使用量は減るのか?
「エコ燃料」が環境の役に立つためには、現在の燃料つまり石油の消費量が減る必要がある。しかしながら「エコ燃料」の使用量が増えたとしても、石油の消費量はおそらく減らない。なぜなら石油には2つの役割があるからである。
石油の1つめの役割は、燃料の元である。石油は数種の有機化合物の混合物であり、重い方から重油、軽油、ジェット燃料、灯油、ナフサ、ガソリン、液化石油ガスに分類される。このうちナフサを除くものが燃料として扱われる。2つめの役割が石油化学製品の材料としてのナフサである。ナフサは主にエチレンとして精製され、PETやナイロンなどの各種石油化学製品の原料として用いられる。
確かに、「エコ燃料」の使用増加により「石油から生み出される燃料」の消費は減るかもしれない。しかし「石油から生み出されるナフサ」の消費量には全く影響を与えず、消費量も減ることはない。つまりどういうことか。石油化学製品の消費量が全く変化しないと仮定した場合、ナフサの消費量は減らないので石油の消費量も減らない。つなりナフサ精製のために「石油燃料」は作られてしまうわけで、何らかの形で燃やさなければいけない状況になってしまう。「エコ燃料」の使用量も増加しているので、結果として二酸化炭素の消費量が増えているという悪魔のような結果になってしまう。
勿論、石油化学製品の消費を選らす運動を推進したり、石油化学製品の原料をナフサから別のものにシフトしていくことで石油消費量の現象も期待できるが、その点について検討されることは少ない。
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結論としては、日本における「エコ燃料」の流行は、アメリカに担がれている要素が非常に強いと思う。また「エコ燃料」を本当の意味のエコにつなげるためには、もっと検討すべきこと、勉強すべきことが多いと思う。特に石油化学製品については十分に考えて行かなくてはいけない。プラスチックのボールペンを持ち、合成繊維の服を着て、ナイロン製の鞄を持ち、「私は地球環境について活動をしています」という人間は、まさに眉唾ものである。
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