2007年7月7日土曜日

参議院をいらないという人もいるが

今日新宿の西口で、「参議院なんか解散してしまえ」と論を高じている人がいた。

内容は、元々参議院は貴族院であり、衆議院のチェック機能としての役割を果たしてきた。現状を鑑みると、衆議院に完全に権力を握られてしまい、チェック機能としての役割も果たしていない無駄なものであるから、とっとと解散してなくしてしまう方が国のためになる。ということである。

なるほど、確かにもっともな意見である。現在の国会のあり方では、たとえ参議院で法案が否決されても、結局衆議院に差し戻されて、そこで可決されれば法案は通ってしまうので飾りとしても役に立っておらず、悪くすると衆議院にて差し戻しの審議をもう一度行いその分の費用がかかるのであるからあっても無駄だという意見も頭ごなしで否定できるものではない。

「だから、なくしてしまえ」というのはいいのだろうか?2つの観点でいかがなものかと思う。
1つめは二院制の意義である。立法府を二院制にしている理由は、いくつかあると思うが、大きくは3つあると思う。
 ・立法府暴走の回避
  片方が暴走した場合も、もう片方が第三者的な立場から抑制的な役割を果たすことができる
 ・鳥観的な視点を持たせる
  両院で構成する議員の背景が異なれば、違った視点で法案を審議することができる
 ・シングルポイントの回避
  二院あることで、選挙や有事の際に、立法府がからになることはなくなる

今の国会で、この3つの理由が完全に果たされているかというと、それはNoだと思う。現実、衆議院で可決されたものは参議院の採決にかかわらず否決されたことはないし、両院とも選挙を行った時期の世相を反映しているだけなので、視点に大きな差があるかとそんなことはない(もちろん参議院の方が幅広い人材が立候補しているとは思うが、最近のタレント候補跋扈を見ていると、その点で差はなくなってきているようにも見える)。しかしながら、参議院はそれなりの役割を果たしていると思う。

2つめは、(ことらの方が本題となるが)「参議院が役立たず」といわれる原因は、本当に参議院にあるのであろうか?という疑問である。もちろん参議院にも問題はないとはいえないと思うが、本当の問題は衆議院にあるのではないだろうか?
ここ数年の衆議院の審議を見ていると、本当に審議をしているのかと感じてしまう。「結局最後は数だけが重要なのだから」という空気を否定できるだろうか。安部内閣になってから特に酷い。何故、重要法案をあれだけ、しかも素早く通すことができるのか。長い時間審議をすれば良いものができるわけではないが、いくら何でも酷すぎる。年金特別救済法、公務員○○法という国の根幹を担う
重要法案が、ここ一ヶ月で通るのはおかしいと思う。しかもその間に故松岡、久間両大臣の問題、年金の5000万件消失問題などなど、いくつもの大きな問題が発生し、その点についても国会で時間が使われているにもかかわらずである。

結局、今の自民党衆議院の運営は「最終的には絶対的に議席が多く、多数決になれば絶対に通るから、日程だけ決めてその通りに粛々と進めていこう」ということに他ならないのである。これはつまり、審議の内容・議員の内容はどうでもよく、議員の数がすべてであるからである。圧倒的な数を持っているので、決めた日程をずらす心配はない。昔から少なからずそういう気配があったが、最近酷いです。結果として、参議院は完全無視である。衆議院議員の中には言葉の端々に「参議院は所詮飾り物だし」という気配を盛り込む人がいる。塩崎官房長官(この人は底の浅さが冷えてしまうのでどうかなと思う)だったろうか「参議院選は中間選挙みたいなものであるから、首相責任を問われることはない」と。さすがに森元首相が否定をしていましたが、あんなのが国の最高機関に在籍して、世界に向けて日本の代表として振る舞っているのかと思うと、さすがに萎える。逆に問題発言として取り上げないところを見ると、国会議員やマスコミはもちろん世間一般にそう思われているのであろう。

今あえて問いたい。「本当に襟を正さなくてはいけないのは、衆議院ではないだろうか。その参議院を蔑視した立ち位置・発言が『参議院不要論』をあおり立てているのではないでしょうか。改革が必要なのは衆議院ではないか?」

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